船 

 わりと気楽に書きましたらこんなんなってしまいました。
 メタファー。奇形。眼球。少女。夕暮れ。厨二病真っ盛り!


 水平線の彼方まで埋め尽くして、巨大な眼球が西に沈む。半ばまで波に浸かって、世界の果てに見事な半円を描く眼球。それは乙女の柔肌よりまっしろで、中心の瞳だけがまっさおで、眺める船上の僕らを、黄昏でまっかに染めているのだった。
 もう過ぎ去った夏の、午後七時二十三分は、劇的な夕暮れに充たされている。朱い世界を眼球が見つめている。視線はうごめく舌を思わせる肉感的なぬめりをたずさえ、僕らをあやしく包み込む。子宮の内にも似た安心感に、思わず息が、ほふぅ、と漏れた。
 隣でニーソックスの少女がふたり、しきりに議論を戦わせている。
「あの眼球はおそらく、いわゆる太陽のメタファー、そういった性質を持つものであるはずよね。けれど太陽の持つ父性的厳格さを、あの眼球は持っていないわ。むしろ母性的な、いえ、もっとあけすけな、例えるならば女性器的ともいえる性格を有しているわ。この事実をあなたはどう受け取るかしら?」
「そうですね。きっと主はこう仰るでしょう。『汝、姦淫せよ!』」
「なるほど、あなたはいつだって的確な発言をするわね。けれど太陽的要素の欠如した太陽のメタファーというのは、はたして本当に太陽のメタファーと言えるのかしら? 確かに言葉にするのは簡単よ。あれが太陽のメタファーであるのは間違いないもの。何故って太陽的役割を有しているからね。けれどいくら役割が同じだからって、あれをメタファーとするのはやはり少々強引な気がするわ」
「野に下った狂人は叫びました。『神は不死である!』」
 ふいに、船のへりを伝って、通常の、眼窩に収まる大きさの眼球が少女達の元へ転がってきた。また反対側のへりからは一匹のウジ虫が這い寄ってくる。ふたつは少女達の目の前で接触し、ほどけ、絡み合い、あらゆる生物の進化をたどってシャム双生児の胎児となった。それから、胎児の片方が母音を、もう片方が子音を、それぞれ発音し、次のような文章を吐いた。
「なるほど、二人の言いたいことは分かった。つまりは太陽こそが眼球のメタファーである。と、そういうことなのだね」
「ええ、そうよ」
「いいえ、違います」
 少女は異口同音に似たようなことを言い、蠅を追い払うような動作で、片方の胎児を叩きつぶした。残った方は子音を吐き出す側であるらしい。小さな身体を怒りに打ち震わせて、次のようにわめいた。
「nntktwsrnd。knkyjndmm!! ktg! thn! kmrnhhtnjtmngnnk!!」
 何を言っているのかは、よく分からない。

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