クリスマス中止記念!! 


 三語:落日、プレゼント、コアラのマーチ

 今年もクリスマスは実施されませんでしたね。
 ……というか、イヴもクリスマスもひきこもってるっていったいどういうことなの。


 熟れたりんごの果実が落ちる。万有引力にしたがって、まっすぐな軌跡で落ちる。落ちていく。そんな景色をふたりで見た。
「まるで落日みたいね」
 きみは言う。そんなことは微塵とも思っていないくせに言う。
「どちらかというと、あれはまぶたに似ているよ。いや、むしろ眼球そのものと言ってもいいかもしれない」
 ぼくは言う。馬鹿らしいことだと分かっているくせに言う。
「にゃあ」
 ねこが鳴く。鳴きたいから鳴く。
 そんな景色をいつか見た。ふたりで見た。

        ○

 十二月二十五日。誰からか包みが届いた。
「きっとサンタさんからのプレゼントだわ」
 きみは半ば本気でそう信じていた。包みは丁寧にラッピングされていた。青いリボンがくっきり鮮やかだった。
 きみはきゃっきゃと笑いながらそのリボンをほどいていった。頬が紅潮して、りんごのように真っ赤だった。破れないよう丁寧に、まるで赤ん坊の服を脱がすようにゆっくり包みを開いて、とたんに中身が爆発した。クリスマス・プレゼントは爆弾だった。きみは永遠になり、ぼくはかたわになった。
「サンタ・テロリズムの驚異! 百万人が犠牲に! 犯人はイスラム原理主義者か!?」
 連日のように新聞が騒ぎ立てた。けれど騒ぎ立てる必要なんてないことを誰もが知っていた。これはむしろ形而上学的な問題で、誰がやった、とか、誰が死んだ、とか、誰が生き残った、とか、そんなことはどうだってよかった。誰かがやって、誰かが死んで、誰かが生き残った。そういうことだった。それだけだった。

        ○

 コアラのマーチはあまくあまく脳髄をひたした。かじられたコアラはサンタの帽子をかぶって笑っていた。にこにこと楽しげだった。
 窓の外に黄昏を見る。地平線に夕日が沈む。赤い赤い太陽がゆっくり落ちていく。
「まるでりんごみたいだ」
 声に出したら虚ろに響いた。なにもかもがからっぽだった。
「まるで心臓みたいだ」
 言い直した。やはり虚ろだった。けれど耳の奧に血管の流れる音を聞いた。ぼくは生きていた。どうしようもなく生きていた。泣いた。背後にはわっかのついたロープがぶらさがって、きっとゆっくり揺れていた。
 そんな景色をいつか見た。ひとりで見た。

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