ドラゴンの眠る間に 

▲お題:「パンツのゴム紐」「振り子」「哀れ」
▲縛り:「恋愛物」「キャラクタ-として人間を出さない(任意)」「主人公の服装について描写する」

 最初の行がむにゃむにゃだけれどけっこうお気に入り。えろは性戯だと思う。


 振り子の軌跡を歩く鬼が、天に手を伸ばしその白熱を欲するように。地底の蠢きを味わう蟲が、柔らかな体毛を震わせ誰かの手を拒むように。あるいは、そのどちらでもなく。無数の松明に囲まれて、洞窟の最奥に『それ』は悠然と存在した。
 『それ』は決して動かない。全長が約二百メートル。体長は八十メートル。やけに長い尾は火を纏って、翼には苔が生えていて、腹は赤くただれていて、つまりそれはドラゴンだった。千年無敗と謳われた、狂人の夢にのみ現れる、哀れなドラゴンの骸だった。殺したのは誰だったか。今では知るすべはないけれど。とにかくそれは殺されていた。割合小さい、それでも草原のあばら屋くらいある頭には、剣が一本。くし刺しにされて、傷口からは血が溢れて、痩せたねずみがその赤色を舐めていて、虚ろな眼窩には蛆がたかっていて、黒と白のコントラストに怖気が走って、わたしはそれら全てを愛おしいと思った。きっと剣のせいだ。あの突き立てられた鋼鉄の刃が、そして湧き出る赤い血液が、わたしの下腹部に熱を孕ませるのだ。パンツのゴム紐にまでにじむ汗は、その熱からもたらされたものだ。暑い。わたしは着ていた甲冑を脱ぐ。雪のように白いコルセットと、装飾用のズロースだけの姿になって、ドラゴンを登る。眼窩に足をかけると、蛆たちの潰れていく感触が骨の髄にまで伝わる。頭頂部にたどりついた。そそり立つ剣の柄が見えた。皮の握りに、ユニコーンの飾りが付けられていて、舐めると錆の匂いがした。腰に手をやり、ズロースとパンツを脱ぐ。コルセットも、もちろん。ドラゴンの頭の上で、わたしは一糸も纏わない。まるで周囲に灯る松明のように、洞窟特有のひんやりとした空気が、わたしの孕む熱を照らす。
 柄の上に、またがった。体内で、いななくユニコーンがやけに大きい。脳髄まで充たす内からの圧迫感と、それに混じってくすぶる、かすかな快感。わたしは今、ドラゴンと、そして世界と、繋がっている。そう、確信した。
 傷口から泥水がしたたり落ちるように、ふいに粘性の腐臭が香った。鼻腔から臓腑に染み渡って、べとり、とわたしを穢す腐臭。ドラゴンは決して腐らない。だから、その甘い匂いは、きっとわたしの子宮から発せられるのだった。
 腰を上下に動かす。神経をひっかくような刺激に、声が漏れる。声は洞窟内に反響して、松明の火を揺らす。あの揺らめく火が消えたとき、なにもかもを拒絶する闇に包まれたとき、何も見えない閉じた世界で、きっと、わたしは……。
 洞窟の最奥にはドラゴンとわたしが存在していて、照らされる影はひとつで、それだけが全てだった。
 ドラゴンは死んでいる。わたしは死んでいく。世界だけが、圧倒的に息づいて。
 『それ』だけが、全てだった。

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