ツンデレ☆BOYとクーデレ☆GIRL 

▲お題:「心霊写真」「脳内がピンク」「北極」
▲縛り:「B級グルメが出てくる」

 名前はわりと適当につけたり、最初からつけなかったり、とくにこだわりはないのですが、今回だけはけっこう考えてつけてみました。
 ……やはり適当につけたほうがいいと思いました。


「心霊写真を撮りにいこう」
 いつもと変わらぬ無表情で、少女、綺木きい子は言う。
 夕映えのオカルト研部室に、開いた窓から秋風が吹き込んだ。涼しげな風はどこか懐かしく、切なさに身体の芯が疼く。きい子の短い髪も吹かれて揺れて、ちろちろと艶めかしい炎のようになびく。黄昏に染まる空はどこまでも澄んでいる。身をとりまく世界中、どこを探したって夏の匂いは見あたらなかった。
 秋だった。どこまでも鮮烈な秋だった。
「……秋だってのに、いまさら心霊写真なのか? ホラーなのか? 学校の七不思議なのか?」
 心の底から嫌がって、少年、久区くに夫は叫ぶ。
「怪談の季節はもう終わった! やっと終わった! というわけで心霊写真なんて忘れよう。忘れちまおう。な。大人しく俺と一緒にUNOでもしてよう。そうしようそうしよう」
 ふう、と少女はため息をつく。やれやれ、と肩をすくめる。
「まだ幽霊なんて怖がってるの?」
「うるせえ、怖いものは怖いんだよ。悪いか。おかげでこちとら、夜は鏡も覗けねえっつうの。どうだ!」
「どうだ、なんて自慢げにされても。困るよ」
「うるせえ、勝手に困っておけ。悪いが俺は心霊写真なんて気味の悪いもん、どこにどう転ぼうが撮る気はないからな」
「撮ろうよ。ポラロイドだって持ってきたんだよ。フィルムだって入ってるのに。ほら」
 と、きい子は首から下げた巨大なカメラを強調するように両手で持ち上げる。
 が、くに夫は目を閉じ、幾度も幾度も首を振る。
「見えません見えませんそんなものは見えません。見えないのなら無いのと同じです。よってポラロイドなどこの場には、無い」
 まるでだだをこねる小学生のようなくに夫に、どうにも手を焼いている様子のきい子。
「もー。どうしたもんかなぁ……」
 少女は考えるような素振りで、顎に手をあてうんうんと唸っている。難しげな顔で、端正な眉根に皺が寄っている。普段から表情の変化が乏しい彼女にしては珍しいくらいの顔つきで、くに夫はしばらくそれを無言で見つめていた。
「そうだ」
 ふいに顔の緊張がほどける。元に戻った無表情で、きい子は鞄の中からひとつのカップアイスを取り出した。
「じゃじゃーん」
「……なんだそれ?」
「撮ってくれるならこれをあげよう。北極名物しろくまだよ」
「ふたに思いっきり九州名物って記されてるんだけどな。しかも思いっきり溶けてるし」
「朝買ってそのまま忘れてたんだよ。別に撮ってくれなくてもいいから貰ってよ」
「仕方ねえな」
 くに夫はカップアイスを手渡しで受け取り、ジュースと化したアイス部分と常温に暖められた果物とを一口で飲み干していく。
「おお、良い飲みっぷり」
「だろ」
 口の周りを拭うくに夫は気をよくしたのか、へらへらと表情を崩した。それを見たきい子はその隣に立つと、
「すきあり」
 ポラロイドのフラッシュが瞬いた。
「えへへ」
 少女はわずかに笑って、頬のえくぼがとんでもなく可愛らしくて、少年は思わず見とれてしまって、時が一瞬だけ止まった。
「撮っちゃった」
 と、きい子は言う。
「……バカップル」
 と、くに夫は言う。
「脳内がピンク色なのは私だけじゃないよ」
「言っておくけどな、俺は違うぞ。俺は」
 言い争う少年少女の距離が閉じていく。二人は夕焼けに照らされながら、どこまでも鮮烈なキスをした。

 ポラロイドから一葉の写真がはき出される。写真には朱に充たされた教室の中でひとりの少女が微笑んでいるのが写っていた。隣にはひとりの少年が、やはり同様に笑って、浮かんでいる。少年に足は無い。遠い昔に失われた。代わりに下腹部の切断面から消化器官が、ピンクに黄色に極彩色に、血を滴らせ毒々しく垂れ下がっていた。それはまるで神話の蝶が羽を休ませているかのように美しく映った。
 少女は嬉しげに佇んでいる。少年に身を寄り添わせて、とろけるように微笑んで。
 ――やがて写真は風に吹かれてどこぞかへと飛んでいき、その行方はいまだようとして知れない。

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